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学会について

会長挨拶

オゾンに関心のあるすべての人々を歓迎します

日本医療・環境オゾン学会 第10期会長  上村 晋一

 2014年4月から会長を拝命している上村です。自然に囲まれた九州の熊本、阿蘇で開業医を営んでおります。どうぞよろしくお願いします。 さて、オゾンといえば、多くの方々にとって想い浮かぶのは「オゾン層」や「光化学スモッグ」だと思います。オゾンがいろいろな病気の治療に効果をあげているなどとは想像もできないことでしょう。ところが、ドイツを中心として、ヨーロッパ諸国では約100年も前から、皮下へのオゾンガスの注射など、オゾンが治療目的で使用されてきました。現在も広く利用されていますし、すでに膨大な治療成績が蓄積されています。私たちはこれを「オゾン療法」とよんでいます。わが国でも、戦前の一時期にオゾン療法が実施されていたという記録があります。また、近年はキューバ、ロシア、アフリカなどにもオゾン療法が拡がっています。隔年で開催される国際オゾン学会にもオゾン療法のセッションが設けられ、適用法や適応症などについての情報交換や作用メカニズムについての議論が深められています。本学会でも毎年4月に東京で研究講演会を開催しています。
 オゾンは塩素よりも強力な酸化剤で、強い殺菌作用を示します。ウイルスもオゾンによって速やかに死滅します。したがって、オゾンは殺菌・消毒剤として、あるいは脱臭剤としていろいろな分野で利用されています。しかし、この強力な酸化作用のゆえに、オゾンは光化学スモッグによる呼吸器障害の一因になっているので、オゾンを利用する作業環境では厳しい濃度規制が求められます。このような毒性を十分に認識した上で、オゾン療法では厳しく濃度管理した極微量のオゾン‐酸素混合ガスやオゾン水などを使用します。実は、本学会の会員諸氏の多くも、オゾン療法の存在を知る前は、「オゾンを人体に用いるなんて!」と思っていたでしょう。しかし、情報が増えるにつれてオゾン療法への期待が広がり、実際にオゾン療法を実施し、治療成績が積み重なるにつれて、オゾン療法への期待は確信に変わってきました。
ところで、米国でのオゾン療法の普及は遅々として進んでいません。その大きな理由は、作用メカニズムが明確になっていないことにあるようです。しかし、この点でも最近になっていくつかの進展がありました。オゾンの生体に対する作用はいろいろありますが、治療効果に関係する主要な作用は抗酸化系の活性化、抗炎症作用、鎮痛作用です。これらは基礎的な研究でも確認されはじめているので、今後の展開が期待されます。なお、先の東日本震災地や和歌山の水害には、殺菌消毒作用はもとより、抗炎症作用や鎮痛作用のあるオゾン水の発生器を携えて本会の医師会員が医療支援に出かけ、多いに感謝されました。災害列島である日本においてオゾンは救世主となる可能性もあるのです。
さて、本学会の前身は、今から20年前の1994年8月に発足した「日本医療オゾン研究会」です。オゾン療法の調査研究と普及を目的としてわずか37名の会員でスタートした研究会ですが、その後、医療機器や設備の殺菌消毒や環境分野におけるオゾンの有効利用なども目的に加え、会の名称を日本医療・環境オゾン研究会に改称しました。この研究会では、医師会員によるオゾン療法の実施、定期的な「オゾン療法セミナー」の開催による医師会員の拡大とオゾン療法の普及、獣医医師会員によるウシやウマなどの大動物およびイヌやネコなどの小動物に対するオゾン療法の実施、年に4回の会報の発行など、本学会に設置した臨床研究部会、獣医部会、歯科部会、環境応用部会、基礎研究部会などを中心に取り組み、着実な歩みを進めてきました。
本年4月現在、会員は法人会員も含めて340名を越え、毎年4月に開催される研究講演会や年4回発行の会報、そして部会活動も格段に充実してきました。加えて、2009年に東京で開催された第19回国際オゾン学会ではメディカルセッションを成功裡に主催し、また2009年からは日本統合医療学会(IMJ)においてオゾン療法分科会として活動し、2011年1月にはEuropean Cooperation of Medical Ozone Societies (EUROCOOP)に加盟するなど、国内外の関連学会との連携も進んでいますし、オゾン療法の社会における認知度も少しずつですが、高まってきたように思っています。
このような着実な発展を背景に、2012年4月に、本会の名称を「日本医療・環境オゾン学会(英語名Japan Society for Medical & Hygienic Use of Ozone)」に変更しました。本会は、その目的を会則第3条において「本会はオゾンによる疾病治療・予防医学への応用、オゾンによる清浄・快適環境の創造、及びオゾン利用の安全性について研究し、その適切な普及に努めることを目的とする。」と謳っています。今や私たちは、環境の浄化や清浄空間の創造あるいは難治性疾患の治療などにオゾンが有効な選択肢の一つであることを確信するに至っています。
今後も、この確信とこれまでの成果を基礎に、医療の分野ではオゾン療法の適応症と適用法の拡大およびその普及に会員協同の下で取り組んでいきたいと思います。また、強力な酸化力や環境親和性などのオゾンの優れた特性を利用して、オゾンを有効に活用する分野の拡大も重要です。食料生産・食品製造の現場や医療環境の清浄化あるいはインフルエンザや口蹄疫等の不活化や病原微生物の殺菌・消毒など、感染予防に貢献する技術開発を促進できればと願っています。
 オゾンの有効活用を考えておられる技術者や研究者、従来の治療法では改善・治癒しない疾病を新たな療法で治療したいと願っている医師や獣医師の方々、オゾン療法の作用メカニズムを解明したいと考えられている研究者の方々、オゾンに関心のある皆様の本会への参加を歓迎します。
とくに私同様、診療を行っている医師の皆様には、ぜひヨーロッパ発祥のオゾン療法を知って頂き、ともに「藁をも掴みたい」患者さんのために一緒に学ばせていただきたいと考えております。
私たちと一緒に、オゾンの活用を通じて社会貢献をしませんか。